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高松家庭裁判所 昭和36年(家)646号 審判 1961年12月09日

申立人 岡村章

主文

本件申立を却下する。

理由

申立人は申立人の名「章」(あきら)とあるを「完文」(さだふみ)と改名することを許可する旨の審判を求め、その理由の要旨は申立人は現在、屋島中学二年生であるが、申立人の祖母シズコは申立人の命名に際し、申立人と同姓同名の叔父の戦死を悼み、その名「章」を選んだところ、申立人の母ユキコが申立人の生後数ヵ月を経た頃申立人の名につき易断を求めた結果「章」は兇名で短命を現わしているから「完文」と改名することを勧められたため、以来小、中学を通じ、右「完文」なる通称名を使用して今日に及んでいるので、ここにその旨改名の許可をえたいというのである。

おもうに、戸籍法第一○七条の改名についての正当な事由のある場合とは改氏についての「やむを得ない場合」よりは幅の広い解釈を採りえられるとしても、単に改名に伴う第三者に影響を及ぼさないという消極面だけでは足りず、さらに一歩を進めて改名の必要性の存在を要求するものと解せられるところ、申立法定代理人の陳述家庭裁判所調査官の調査報告書ならびに申立本人の賞状卒業証書によれば申立人が「完文」(さだふみ)という通称名を永年使用してきたということはもちろん又改名しても今日のところでは、対社会的関係において影響を及ぼすところの少ないことは認められるけれどもこの変更を求める動機原因がもつぱら易判断に左右された結果に基因するものであり、このことは結局親権者たる母ユキコの単なる主観的感情に過ぎないのであるから、通称名の永年使用という既成事実があつても戸籍名との不一致による混乱はこの戸籍名を使用することによつて解消でき、これは必ずしも困難なことではない。 結局申立人の改名についての必要性はないものと判断する。

よつて本件申立は理由がなく却下することとした。

(家事審判官 萩原敏一)

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